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とことんマイペースに気ままに、観たものや読んだものの感想を残しておく場所


by pannie
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路上のソリスト

路上のソリスト_b0031606_12325173.jpg


観て来ました。
この日が、ようやく訪れた・・。
長かった~~~っ。

最初にこの作品について書いた日記は、なんと2007年の9月です。
長かった・・・・。

待ち焦がれたロバートが、そこにいました。
ファン目線を外せないので、私のレビューは全く参考にならないと思いますが・・
頑張って冷静な目線の感想を。


公式HPやチラシなど、公開前から出ている情報に、「統合失調症の路上生活者」って言葉があります。

ジェイミー・フォックス演じるナサニエルは、その才能に期待され、名門音楽学校に入学したものの、上手くいかず退学してしまい、その後も上手く生活が出来なくなって路上生活者に。
一方、LAタイムスの人気コラムニストとして日々題材を探している、ロバート演じるロペスは、自転車をかっ飛ばしてて自爆事故にて負傷。
なんか上手く行かない雰囲気の中、偶然ナサニエルが奏でるヴァイオリンの音に導かれ、大都会の真ん中で二人は出会います。
まくし立てるようなしゃべり方、成り立たない会話をナサニエルと交わしたロペスは、ナサニエルがジュリアード音楽院の生徒だったことを示唆する言葉を発したのに興味を持ち、彼を調べ始めコラムになるかも・・と考えた。
ナサニエルについて書いた最初のコラムは大反響を呼び、LAの話題となりました・・・・・

たまたま何かに導かれて出会った、住む世界が全く違う二人の友情の物語です。
価値観も求める物も全然違う二人。
そんな二人が、どんな風にしてお互いを「友達」だと呼び合えるようになったのか。
実在の二人の姿を、出来るだけ現実に近い形で、余計な脚色を加えることをせずに描いています。
余計な脚色がない分、盛り上がりに欠けるし、強烈に涙腺を刺激するような演出も無いです。
なので、観た人に多い感想は「物足りない」。
なるほどね。
確かに、もっとドラマチックに、もっと感動的に描くことはいくらでも出来る題材です。
統合失調症を扱った作品ではないけども、「フォレスト・ガンプ」や「アイ・アム・サム」(私、統合失調症を扱った作品を見たことが無いかも・・浮かんでこない。)・・その他、音楽映画でもドラマチックなのは沢山ありますから、そんなのを期待していた人には、大きく外れでしょう。
また、焦点がぼやけていると言う感想も多くて、これもなるほどね。
でも、私からすれば焦点はハッキリしています。
まず、この作品は路上生活者のハリウッド的サクセスストーリーではない。
また、統合失調症が何であるかを世に知らせる為の物でもない。
ロペスとナサニエル、二人の友情のあり方を、ありのままに現実として描いているのです。

人と人が係わり合い、繋がりを持ち、その繋がりを保ち続ける為には、お互いがどうあるべきなのか。
相手が望む事をちゃんと理解出来てるか、良いと思ってしている事が本当に相手にとって良いことなのか。
どのラインまで関わり続けられるのか・・・。繋がり続ける勇気と覚悟があるか。
関わってもらいたい、けどココから中へは入ってきて欲しくない、でも去らないで
欲しい。
差し出そうとすること、求めている事、受け入れられること、無理なこと・・・
どこでどうバランスを取るか、どこまで強く主張するのか。
人が人と関わる上でぶつかる多くの事を、この二人は乗り越えて友人となります。
関わり続けられるかどうかのラインを描写する場面、ナサニエルの友情を求める一言と、それを受けて狼狽するロペスの表情、困惑の描き方がすごく良かった。
あの場面には、グッと胸を捕まれた思いがしました。

★をつけるとしたら、3つ半。まだまだ良くなる可能性があった題材だとは思いますが、悪くは無いです。
私は、「ほれ泣け」「どうだ、感動だろ!」ってな描き方が嫌いな方なので、抑え目描写のこの作品、好きです。

作品中、空からの映像が何度か出てきます。
LAを空から見るとですね、プール付きの豪邸がどんだけ多いか、よ~~っく判ります!(笑)
「すご~」て思っちゃいましたよ。
あと、音楽を聴いている者のまぶたの裏に映るイメージの描写が出てきてて、そこのところの好き嫌いがハッキリ分かれているようです。
なんで皆はあの描写が嫌かなぁ。
ロペスには、ナサニエルには、ああ見えたんだなって・・思ったけどな。

作品中に、精神的な疾患が原因の路上生活者が集まる施設が出てきます。
その施設がある地域の場面に出ている人達は、本物の路上生活者だそうです。
エキストラとして500人を雇ったそうです。
活気に溢れて洗練された自由の都市・・・
そんなイメージしか無いあのLAも、一歩踏み入れたら立ち尽くしてしまいそうになる場所があるんですね。
すごくリアルで、見ていて正直怖いと感じました。
みんな、そうなりたくてなったわけでは無いだろうけど。

そういえば、映像はかなり面白いと思いました。
路上から空へ、トンネルから近代的建物へ。
細かく覚えていませんけれど、建物とか都市の見せ方が巧いなと思いました。

ロバートについては・・
何も言うことありません。
最初から最後まで、ずーーーーっと、「こんなロバート待ってた」のロバートでした。
一番好きなとこは、ナサニエルのチェロを聴いた瞬間、何かに解き放たれたような表情になる場面。あの目、あの表情・・。
そして、上にも書いたけど、狼狽し困惑する場面。
いまだに、私は魂を抜き取られた様な状態です・・・。

ジェイミー・フォックス、すごく巧かった。
レイも圧巻でしたけど、ナサニエルはレイとは全く違う人物像。
言われなかったら同じ役者が演じていると判らないかも・・・。
主役二人の演技には、大満足でした。
by pannie | 2009-06-04 12:41 | 映画 ロバート・ダウニー・Jr