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とことんマイペースに気ままに、観たものや読んだものの感想を残しておく場所


by pannie
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スーパースター カム・サヨン

スーパースター カム・サヨン_b0031606_2375240.jpg2005年12月10日 土曜日。
韓国エンタテインメント映画祭 大阪中之島リサイタル・ホールにて鑑賞。

韓国では去年(2004年)秋公開の作品。
韓国でプロ野球が作られたのが1982年なのだそうだ。つい最近だったんだな。
その年に、「三美(サンミ)スーパースターズ」に一般募集で入団した実在の左腕投手がモデルの実話ベース。

サラリーマンとして働いていたカム・サヨンが、球団テストに合格し、念願かなってプロ球団に入団。
夢が叶ったと喜ぶサヨンだけれど、球団は連戦連敗の弱小球団になってしまう。
サヨンは先発には使ってもらえず、毎回「敗戦処理」として起用される日々だった。
監督に「先発で投げたい」と直談判するも空しく、「プロならどんな時にも全力で仕事しろ」と厳しく返される。
実は、チームに左腕がいなかったから合格できただけのサヨン。
チームから何の期待もされず、負け続きでイライラし始めたチームメイトには罵られる始末。
一方、最強チームの国民的スター投手パク・チョルスンは、次の三美スーパースターズとの試合で、20連勝するだろうと世間は大騒ぎ。
サヨンのチームの投手は誰一人、相手投手の記録達成がかかった試合で投げる気力などない。
サヨン、先発デビューのチャンス。
そして、とうとうその日がやってきた。
先発で投げたい、そして勝ちたい。 サヨンの夢がかかった試合が幕を開けた・・・。


野球映画は、これまで数多く作られているだろうと思うし、実在の選手をモデルにした物も多いだろう。
私は、あまり観た事がないのだけれど、それらはどれも結構感動するものらしい。

この映画は、スター投手の栄光を讃えた作品ではない。
勝つか負けるか。100かゼロか・・・みたいな世界で、ひたすら努力し続けて、あきらめずに前に進む事をおこたらなかった、そんな小さな投手の信念を讃える映画だった。


心の底から、感動した。


ひたすら野球を愛し、野球に生きたサヨンだけれど、その素顔は家族思いで温かくて、優しくて恋に不器用で欲が無い。
「なんとしても勝って、一旗あげて世間を見返してビッグになってやろう」・・などという、アメリカチックなサクセスを求めたりしない。野心家ではないのだ。
子供の頃、野球が大好きだった人なら誰もが思い描いたのではないだろうか。

「一生に一度でいいから、プロ野球のマウンドに立ってみたい。できれば、勝ってみたい」
・・・・・。

そんな夢を抱きながら敗戦処理に明け暮れるサヨンを 励まし支える家族の姿が胸を打つ。
バクチ打ちで、人はいいけどイマイチ頼りにならない兄。自由で気ままな妹。
女手一つで3人の子供を育て上げ、「ちゃんと結婚させなければ」と、地道に商売を続ける母。
この、母がいい。強気な母だ。野球選手になるのを真っ向から反対した母だ。
だけど、サヨンが野球選手の道を歩み始めてからは、一切口を出さず見守るのみに徹する。

サヨン先発の試合での、最後の1球。
私はこのシーンを見るまで、あの小さなボールに、こんなにも多くの人の思いが詰まっているなんて知らなかった。
試合のシーンは、結構長く続いたと思う。けど、私は全然長さを感じなかった。
サヨンを見守るみんなの姿に、思いっきり感情移入していた。
サヨンがほのかに思いを寄せる女の子の存在も、清々しく爽やかでカワイイ。



長くなってしまった・・・。

人によっては、何のことはない「爽やか感動スポーツ物語」なのかもしれない。
けど、どうだろう・・・? 私、これはかなり良く出来ていると思うのだ。
お決まりの展開も見られるけれど、それはこの手の作品には必要不可欠な物だったと思う。チーム内での揉め事、何かをキッカケに猛烈にトレーニングする姿、実は陰で努力しているヤツだった・・とか。(笑)
ディズニー系のスポーツ物にも、必ず見られるシーンだ。
そして、あちらこちらに笑いが散りばめられている。
時にクスクス、時にガハハ・・と、観客の笑い声が響く。
ホロりとくるシーンでは、チラホラと鼻をすする音が聞こえ、緊張の瞬間 私たちは息を飲み、場内がシーーーンと静まり返った。
みんなが、カム・サヨンの投げるちっぽけなボールに釘付けになっていた。(と思う。)


役者の力だ。イ・ボムス氏の力だと思った。

今まで、多いとは言えないまでもそれなりの数の映画を観て、何人かの俳優を好きだ好きだと騒いで喜んできた私。
アジアに目覚めて2年半ほどになる。きっかけはレスリーだったけど、その後トニーに惚れた。
ほぼ同時期に韓国作品の魅力にのめりこみ、チャ・テヒョン氏とイ・ジョンジェ氏を知った。
そして、惚れこむ。
で、去年の夏、ジョンジェをスクリーンで初めて観た時にボムス氏を知った。
不思議な役者だと思った。
決して男前ではない、背も高くない。 演じる役柄だって、カッコイイ物ばかりじゃない。
(と言うか、多種多様だ。)
この映画だって、歴史に残る名作と言われる事は多分無いだろう。
冷めた目で見れば、ごく普通に観えるものなのかもしれない。
だけど、この作品は想像以上に心に刺さってきてしまった。

野球少年だった人たちには是非とも観て貰いたいと思う。
野球少年じゃなかった人も、母を思いながら、息子や娘を思いながら、夢を追いかける自分の姿に重ねながら、一人でも多くの人に観てもらえると嬉しい。
by pannie | 2005-12-13 01:33 | 映画 イ・ボムス