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by pannie
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父と暮らせば

2004年 日本  
監督・・・黒木和雄 出演・・・宮沢りえ/原田芳雄/浅野忠信


広島に原爆が落とされた後、身内を失い一人で生きる美津江の元に突然現れた父の幽霊、竹造。
竹造は美津江に恋をして欲しかった。終戦以降、誰にもときめく事が無かった美津江が、ある男性にホンの少しの恋心を抱いたのをきっかけに、竹造は美津江の前に現れることが出来たのだ。
竹造はキューピッドになろうとするが、ひとり生き残った美津江の心には思いもかけない深い傷が残っていた。
「恋なんて、してはいかんのです。生きてるのが、申しわけのーて仕方がない・・」


竹造が現れた日常から始まる冒頭、しばらくはコミカルで楽しい親子の会話に心が和む。
「木下(浅野)に惹かれているのだろう?」と、からかい気味にキューピッドになろうと張り切る竹造が可愛い(笑)
ところが、美津江は「自分は恋などしてはいけない。そんな資格など無い」と言い張る。

話が進むにつれ、美津江の中の苦悩が吐き出され、ピカ(原爆)の後どんなに辛い思いで精一杯生きていたのかをぶつけられる竹造。
竹造は、その思いを受け止めながら、前へ進め、生きなければならない、とあの手この手で諭す。
そして、ピカの現実から逃げてはいけない。末代まで二度と同じ不幸が起ってはならない。
生き残ったものたちは、語り継がねばならないのだと訴える。

あの時、広島にいながら生き長らえることが出来た人の心に、原爆はどれだけの深い傷跡を残してしまったのだろう。
美津江から語られる言葉には思いも寄らないものもあり、ハッとさせられた。
経験していない私たちには、とうてい想像できることではない。
それに耐えて、生きなければならない、恋心にまで蓋をしなければいられない辛さ。

私たちに何が出来るというわけではないが、知っておくべき事なのではないだろうか・・と思った。

宮沢りえの細い体や柔らかい声からひしひしと伝わってくる、耐え難いものに耐えようと必死に立っているギリギリの強さ。すぐにもくずれてしまいそうな、もろさ。
竹造を「おとったん」と呼ぶ声がとても愛らしい。

原田芳雄は、粗雑で荒っぽいけど憎めない可愛さを持っていて、宮沢りえと対照的な外見が又味があって良い。

ほとんど、美津江の住まいでの二人芝居状態で、セリフが多い!
カメラも長回しなんじゃないだろうか・・。
舞台を観ているようだと思ったら、既に舞台で沢山上演されているものらしい。

必見です。
by pannie | 2006-01-16 00:59 | 映画 (日本)